国民総ボったくりだったベトナム
ベトナムのレストラン。フエの町。ここではボったくられなかった。
私がベトナムに訪れたのは、人生で1度きりだ。周辺国のタイ、カンボジア、ラオスは何度も行っているのだが、ベトナムだけは1度しか訪れたことがない。
以前に記事を書いたが、ベトナムの中ではホイアンがいちばん好き。あのゆったりとした落ちつく雰囲気に、たまらなく癒される。世界遺産で観光地なので観光客がわんさか居るのが玉にキズ。まあ自分自身も観光客だから、人のことは言えないが。
そんなベトナムに私が訪れたのは随分と前(2004年)だ。なので、今はもう全然そんなことはないのかもしれない。
しかしその当時ベトナムの人達がほとんど皆、ナチュラルにボったくってきた事は鮮明に覚えている。
それほど法外なボったくりはなかったのだが、食堂や商店、タクシーやバスの料金と、どこで何を買うにしてもその都度ボったくろうとしてきた。数十円~数百円くらい。
ベトナムに入国して最初のうちは相場があまり分かっていなかったので、それなりにボったくられていたと思う。
だんだんと相場が分かってくると、「いやいやそれボったくってるだろ、普通このくらいの値段だろう」と交渉ができるようになってきた。
相手もわかっているので、大抵の人は少し話せばすぐに適正な値段か、ほんの少し高めの値段でモノを売ってくれた。
地元の人とまったく同じ値段で買うのは、なかなか難しいものだ。相場も完全には分かっていないし、言葉もロクに話せないのだから。
中には何をどういってもボったくってくる輩もいた。特に、他に選択肢がないときはやはり足元を見てくる。本数の少ないバスに乗ったときなどに、そういうことがあった。
地元の人達の倍以上もの値段をふっかけてきて、払わないならバスから降りろ、みたいな。なんとか交渉して少しは値段を下げることはできたが、かなり割高な料金を払わされたりもした。悔しい。自分の交渉力の無さが悲しい。
ごく普通の食堂でラーメン(インスタント麺)を食べて、優しそうなおばあちゃんにお勘定を頼んだ時でさえ、笑顔で自然にボったくってきたりする。ちょっと言ったらすぐに値段は下がった。おばあちゃんに悪気はまったく無さそうだった。
食堂で出されたおしぼりを使ったら、おしぼり料金を取られたりもした。……これはボったくりとは違うな。日本での常識とは違うだけだ。
もうボったくりもここまでくると、一種の文化だといえるのではないか。
それに、最初はちょっと戸惑ったが、慣れてきてからは楽しめるようにもなってきた。楽しく交渉するのもいい経験になった。日本ではなかなかお店で交渉とかしないからなあ。
毎回毎回交渉しなけりゃならないのがちょっと疲れるが……。
そんなボったくりの国ベトナムだけれど、私はけっこう好きなのだ。ごはんは美味しかったし(フォーを食べまくった)、ホイアンとかフエのような歴史的な町、ハロン湾のような雄大な自然など、見るところもいっぱいある。ボったくってはくるが、人も悪くはない。
いやもしかすると、今のベトナムはもう、ボったくりなど全く無くなっていたりするのだろうか。もしそうなら、それはそれで少し寂しい気もする。いや、決してボられたくはないんだけれどね。皆が皆ボったくってくるっていうのもなんだか面白かったので……。
ベトナム、また行きたいなあ。遠い国ではないから行くのは難しくないんだけど、なかなかチャンスがね。でも、生きているうちにもう1回は行こう!